gem を複数バージョンでテストするため、appraisal を使ってみる
Ruby Ruby on Rails
Published: 2020-07-12

最近、Rails Upgrade のプロジェクトをやったのですが、そのとき困ったことがありました。

複数のリポジトリに分けてソースコードを使っており、それぞれのリポジトリが共通して利用している社内gemがあり、複数の Rails バージョンで動作を保証する必要が出てきました。

いままでは複数のリポジトリが同じRailsバージョンだったので、大きな問題には、ならなかったのですが 社内gem が複数の Rails で動くことを保証するため、 複数の Rails バージョンでテスト (rspec) を実行するようにしました。

「なんで “複数の Rails で動くことを保証” する必要があるのですか?」と思われるかもしれませんが、 このようなリポジトリが、Railsのバージョンが新しい順にあるとします。

  • リポジトリA (ver. x)
  • リポジトリB (ver. y)
  • リポジトリC (ver. z)

(文字だけだとイメージしづらいので、図を置いておきます)

例えばですが、x になってから新しいメソッド def only_x が追加された時を考えましょう。 この新しいメソッドを使っていたとして、ver. y ver. z では動かないとなります。

そのために my-gem.gemspec で rails のバージョンを指定すればいいのですが、先行して各リポジトリが依存している 社内gemの my-gem をリリースすることが出来ないということになってしまいます。

  • 各リポジトリが社内gemの my-gem に依存している
  • 日々、社内gemの my-gem は開発が行われている (差分がどんどん出る)

そんな時に、この gem を使いました。

今回は、社内gem (my-gem という名前とします) で、下記のRailsバージョンでテスト (rspec) を実行できるようにします。

  • Rails 5.1.0
  • Rails 5.2.3
  • Rails 6.0.0

確認環境

$ ruby --version
ruby 2.5.5p157 (2019-03-15 revision 67260) [x86_64-darwin17]

調査

Github にある通りにセットアップしていきます。

Appraisals ファイルの準備

Appraisals

appraise "rails-5.1.0" do
  gem "rails", "5.1.0"
end

appraise "rails-5.2.3" do
  gem "rails", "5.2.3"
end

appraise "rails-6.0.0" do
  gem "rails", "6.0.0"
end

インストール

my-gem.gemspec

group :development do
  # 省略...
  gem 'appraisal'
end
$ bundle install
$ bundle exec appraisal install

このファイルが出来上がります。 各Railsバージョンごとの依存を管理しています。

gemfiles/rails_5.1.0.gemfile
gemfiles/rails_5.2.3.gemfile
gemfiles/rails_6.0.0.gemfile

テストファイル用意

spec/models/user_spec.rb

require 'rails_helper'

RSpec.describe User, type: :model do
  it '計算1 should' do
    (1 + 2).should eq 3
  end

  it '計算2 expect' do
    expect(3 + 4).to eq 7
  end
end

テスト実行

それではテストを実行してみましょう。

$ RAILS_ENV=test bundle exec appraisal rspec spec/models/user_spec.rb
出力結果 はこちらになります。 (deprecation warning など不要だと思われる情報は削ったり、パスを書き換えたりしてます)

Rails5.1.0 でのテスト

>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_5.1.0.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}
​
All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..
​
1 deprecation warning total
​
Finished in 0.21237 seconds (files took 5.08 seconds to load)
2 examples, 0 failures

Rails5.2.3 でのテスト

>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_5.2.3.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}
​
All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..
​
1 deprecation warning total
​
Finished in 0.22129 seconds (files took 5.45 seconds to load)
2 examples, 0 failures

Rails6.0.0 でのテスト

>> BUNDLE_GEMFILE=/my-gem/gemfiles/rails_6.0.0.gemfile bundle exec rspec spec/models/user_spec.rb
Run options: include {:focus=>true}

All examples were filtered out; ignoring {:focus=>true}
..

1 deprecation warning total

Finished in 0.07676 seconds (files took 6.03 seconds to load)
2 examples, 0 failures

これで、Appraisals ファイルに記述してある3種類の Rails バージョンで rspec が実行されます。 ちなみに、こんな感じで、Rails 5.2.3 だけをテストすることも可能です。

$ RAILS_ENV=test bundle exec appraisal rails-5.2.3 rspec spec/models/user_spec.rb

はい。これで、特定のRailsバージョンが動かない処理が書かれたときに検知できますね!

みなさん、お気づきかと思いますが、開発する時に自動テストがきちんと書かれているから検知できるのです。

私は、自動テストの効果についてピンと来てませんでしたが、Rails Upgrade のプロジェクトを通じて、自動テストの重要性に気付かされました。